辞書には書かれていないことばの話仁田 義雄
岩波書店 刊
発売日 2002-11
言葉に鋭敏になるために 2006-03-20
辞書と文法書があれば、言語の理解と表現ができるわけではない。そのためには、本書のような解説・手引き書が必要とされる。しかし、日常の言語生活は、そんなに杓子定規に、厳密になされているわけでもなく、とくに日本語はあいまいに使われている。
著者は1970年代から「文法現象の分析・記述に役立つような辞書の記述」を主張してきたようである。本書は動詞に限ったものになったが、ある程度まとまりのあるものになったと著者は言っている。一例を挙げる。
「湯を沸かす」はおかしいか、の問題…「水を沸かす」=水を(湯に)沸かす。即ち、この「水」は〈消滅の対象〉と呼ぶ。これに対して、「湯を沸かす」=(水から)湯を沸かす。即ち、この「湯」は〈結果の対象〉と呼ぶ。このように、どちらが正しいの問題ではなく、どちらも文法的に成立しうることになる。
「服を汚す」の場合…服は汚れても服として存続し、状態だけが変化する。「服」は〈変化を担う対象〉と呼ぶ。
「セーターを編む」「毛糸を編む」の場合…「セーター」は〈結果の対象〉「毛糸」は〈変化を担う対象〉どちらも文法にかなっている。このように、動詞の表す語義のタイプによって、対象の名詞の意味的特徴も決まってくる、と述べられている(雅)
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